AWSの請求書見て震えた人、集合 — 3大クラウドの「本当のコスト」を暴露する

クラウドサービスの選定において、料金は最も重要な判断材料の一つだ。しかし、各プロバイダの料金体系は複雑で、公式サイトの料金表だけでは実際のコストを把握しづらい。この記事では、2026年時点でのAWS、GCP、Azureの料金を、実際のワークロードシナリオに基づいて比較する。公式の値引きプログラムや隠れたコストも含めて、本当のコスト感をお伝えする。

比較の前提条件

公平な比較のため、以下のワークロードを基準とする。

  • Webアプリケーション: 中規模のSaaS(月間100万PV、ピーク時1000 req/s)
  • コンピュート: 4vCPU / 16GB RAMのインスタンス × 3台(冗長構成)
  • データベース: PostgreSQL互換マネージドDB、2vCPU / 8GB RAM、100GB SSD
  • ストレージ: オブジェクトストレージ 1TB + CDN配信 500GB/月
  • ネットワーク: データ転送(アウトバウンド)500GB/月
  • Kubernetes: マネージドK8s、3ノードクラスタ
  • リージョン: 東京(各プロバイダのap-northeast相当)

コンピュートインスタンス比較

最も基本的なコンピュートリソースから比較する。4vCPU / 16GB RAMの汎用インスタンスのオンデマンド料金だ。

オンデマンド料金(月額、東京リージョン)

  • AWS EC2 m7i.xlarge: 約$215/月($0.294/時間)
  • GCP Compute Engine e2-standard-4: 約$185/月($0.253/時間)
  • Azure D4s v5: 約$198/月($0.271/時間)

オンデマンドではGCPが最安だ。ただし、これはあくまでリスト価格であり、実際の運用では各種割引を適用する。

長期割引プログラム

各プロバイダには長期利用の割引プログラムがある。

  • AWS Reserved Instances(1年、全額前払い): 約40%割引 → $129/月
  • AWS Savings Plans(1年、全額前払い): 約38%割引 → $133/月
  • GCP Committed Use Discounts(1年): 約37%割引 → $117/月
  • GCP Sustained Use Discounts(自動適用): 最大30%割引 → $130/月
  • Azure Reserved Instances(1年): 約38%割引 → $123/月

1年コミットではGCPとAzureが拮抗する。GCPのSustained Use Discountsは予約不要で自動適用されるため、コミットメントなしでも割引が受けられる点が魅力的だ。

スポット/プリエンプティブインスタンス

  • AWS Spot Instances: 最大90%割引(ただし中断リスクあり)
  • GCP Spot VMs: 最大91%割引(旧Preemptible VMの後継)
  • Azure Spot VMs: 最大90%割引

バッチ処理やCI/CDワーカーなど、中断に耐えられるワークロードではスポットインスタンスが圧倒的にコスト効率が良い。各プロバイダで割引率に大きな差はない。

マネージドデータベース比較

PostgreSQL互換のマネージドデータベースを比較する。

  • AWS RDS for PostgreSQL(db.m7g.large、100GB gp3): 約$250/月
  • GCP Cloud SQL for PostgreSQL(db-custom-2-8192、100GB SSD): 約$220/月
  • Azure Database for PostgreSQL Flexible Server(D2s_v3、100GB): 約$235/月

GCPが若干安いが、機能面での差も考慮すべきだ。AWS RDSはマルチAZ構成が成熟しており、Blue/Greenデプロイメントによるゼロダウンタイムのメジャーバージョンアップグレードが可能だ。GCP Cloud SQLは2026年になってようやく同等の機能が追加された。

サーバーレスデータベースという選択肢

トラフィックの変動が大きいワークロードでは、サーバーレスDBも検討に値する。

  • AWS Aurora Serverless v2: 最小0.5 ACU(約$43/月)〜 自動スケール
  • GCP AlloyDB Omni: オンデマンド課金(2026年にサーバーレスモード追加)
  • Azure Cosmos DB for PostgreSQL: 分散データベース、vCore単位の課金

夜間やオフピーク時にリソースを最小限に抑えられるサーバーレスDBは、コスト最適化の有力な手段だ。

オブジェクトストレージ比較

  • AWS S3 Standard: $0.025/GB/月 → 1TBで$25.60/月
  • GCP Cloud Storage Standard: $0.023/GB/月 → 1TBで$23.55/月
  • Azure Blob Storage Hot: $0.02/GB/月 → 1TBで$20.48/月

ストレージ単価ではAzureが最安だ。ただし、APIリクエスト料金やデータ取得料金も含めたトータルコストで判断する必要がある。

データ転送(アウトバウンド)料金

クラウドの隠れたコストと言われるのがデータ転送料金だ。

  • AWS: 最初の10TB $0.114/GB → 500GBで$56.25/月
  • GCP: 最初の1TB $0.12/GB、1-10TB $0.11/GB → 500GBで$56.40/月
  • Azure: 最初の5GB無料、5GB-10TB $0.087/GB → 500GBで$43.07/月

2026年時点で、AWSは最初の100GBの無料枠を提供している。GCPも同様のプログラムを開始した。Azureはデータ転送料金自体が安い。CDN経由の配信であれば、各プロバイダともCDN料金の方が安くなるケースが多い。

マネージドKubernetes比較

3ノードのKubernetesクラスタを比較する。

  • AWS EKS: コントロールプレーン$0.10/時間($73/月)+ ノード料金
  • GCP GKE Autopilot: コントロールプレーン無料 + Pod単位課金
  • GCP GKE Standard: コントロールプレーン無料(1クラスタ目)+ ノード料金
  • Azure AKS: コントロールプレーン無料 + ノード料金

EKSのコントロールプレーン課金は地味に痛い。複数クラスタを運用する場合、年間で$876/クラスタのコスト差が出る。GKEとAKSはコントロールプレーン無料だ(GKE Standardは2クラスタ目以降 $0.10/時間)。

トータルコスト試算

冒頭のワークロードで月間トータルコストを試算する(1年コミット割引適用)。

AWS

  • EC2 × 3台(RI): $387
  • RDS(RI): $175
  • S3 1TB: $26
  • CloudFront 500GB: $51
  • データ転送: $56
  • EKS コントロールプレーン: $73
  • 合計: 約$768/月

GCP

  • Compute Engine × 3台(CUD): $351
  • Cloud SQL(CUD): $154
  • Cloud Storage 1TB: $24
  • Cloud CDN 500GB: $42
  • データ転送: $56
  • GKE コントロールプレーン: $0
  • 合計: 約$627/月

Azure

  • VM × 3台(RI): $369
  • Database for PostgreSQL(RI): $165
  • Blob Storage 1TB: $20
  • Azure CDN 500GB: $44
  • データ転送: $43
  • AKS コントロールプレーン: $0
  • 合計: 約$641/月

料金以外の判断基準

コストは重要だが、それだけで選ぶべきではない。以下の要素も考慮すべきだ。

  • エコシステムの成熟度: AWSはサービス数・ドキュメント・コミュニティが最も充実
  • AI/ML: GCPはTPUやVertex AIなど、ML領域での優位性がある
  • エンタープライズ統合: AzureはMicrosoft 365やActive Directoryとの連携が強み
  • 日本語サポート: 各社とも日本法人があるが、AWSのサポート品質が安定している
  • コンプライアンス: 金融・医療など規制業界では認証の取得状況も重要

コスト最適化のベストプラクティス

  • まずは使用状況を可視化する。AWS Cost Explorer、GCP Billing Reports、Azure Cost Managementを活用
  • 未使用リソースを定期的に棚卸しする。停止し忘れたインスタンスやアタッチされていないEBSボリュームは意外と多い
  • 適切なインスタンスサイズを選ぶ。オーバープロビジョニングは最大のコスト増加要因だ
  • FinOpsの文化を作る。エンジニアリングチームにコスト意識を持たせる
  • マルチクラウドのコスト管理にはCloudHealth、Spot.io、Infracostなどのツールを活用する

最安のクラウドは「最も安いプロバイダ」ではなく「最も無駄なく使っているプロバイダ」だ。プロバイダ選定よりも、選んだプロバイダの最適化に注力する方が、多くの場合コスト効果は高い。

2026年のクラウド料金はますます複雑化している。しかし、この記事で紹介した比較フレームワークを使えば、自社のワークロードに最適なプロバイダを合理的に選定できるはずだ。